『月に囚われた男』(邦題)

３年契約で月に赴任し、地球のエネルギー減であるヘリウムを採掘し定期的に送り続ける男。サム・ロックウエルが素晴らしい演技を見せる。ほぼ一人劇。


唯一同乗しているのはAI(人口知能搭載ロボット)のガーディー。その声はケヴィンスペイシー。少しドライなVoiceは、ニュートラルであり、忠実でもあり、映画全体のトーンが確立される。あっぱれ。

監督のダンカン・ ジョーンズは、デヴィッド・ボウイの息子らしい。
低予算のIndependent Filmながら、プロダクションデザインもVFXも群を抜いたものがある。白を基調とした宇宙船室内は、『2001年宇宙の旅』を彷彿させるアートワーク。
チープさを感じさせない、いや、考えさせないのは、ストーリーのテーマがシンプルかつ骨太に伝わってくるからだろう。






自分はクローンであるとわかってしまったサム。
自分の体も記憶も、コピーされたものであるを知る。

アイデンティティ・クライシス。。。
これがこの映画の核である。

自分が当然だと思っていた事が、一瞬にして崩壊された時に、人間は自己の同一性を失う。不確かな状況を対処する能力はなく、心理的危機に陥ってしまう。

何だかいちいち今の私にあてはまるな。
気分転換に偶然見た映画で、今の自分が陥りそうな状況を認識させられてしまった。
皮肉とはこういうことだね。

主人公のサムは、勇気を持って自己に立ち向かう。
その先に明るい未来はないと知っていても。

月に囚われた男 コレクターズ・エディション [DVD]

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント